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コアジサシの渡りを調べる 

コアジサシとは

 コアジサシは、チドリ目カモメ科に属する体長28cmほどの小型アジサシ類です。繁殖のためにオーストラリアやニュージーランドから数千キロの長い道のりを渡って来ます。

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コアジサシをとりまく現状

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 コアジサシは、河川の中州や海岸線の砂浜・造成地等の裸地環境に飛来し、5月から8月にコロニーを形成しますが、コアジサシが利用できる良好な環境は人の影響によって減少しています。また、コロニーを形成することができた数少ない場所も、自然災害や外敵による影響で、安定して子孫を残すことができないのが現状です。そのため、環境省版のレッドデータでは絶滅危惧Ⅱ類に、都道府県版のレッドデータでは、45都府県で絶滅が懸念されるカテゴリーに分類されています。

 

 コアジサシは国境を越えて渡りをするため、オーストラリア、中国、ロシア、アメリカとの間で結ばれている二国間の渡り鳥条約の中にもリストアップされており、これに基づいて、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)では、国際希少野生動植物種に指定されています。

コアジサシを保全していくために~ジオロケーターの活用~

 コアジサシは渡り鳥であるため、繁殖地だけでなく、越冬地、そして中継地も保全していかなくてはなりません。これらの内のどれか一つが欠けても駄目なのです。

 国内の繁殖地ではNPOやボランティア等によって営巣地の保全や整備が行われています。越冬地は標識調査の結果などからオーストラリアなどに渡っていることが確認されていますが、こちらもオーストラリアでの繁殖個体群と共に、保全対策が行われています。しかし、実際にどこを通っているかが把握されていないため、中継地は保全対象となっていません。数千キロを移動する種にとって好条件の中継地の存在はエネルギー補給のためにも不可欠ですが、今まで調査は行われていないのです。その大きな原因がコアジサシの大きさです。位置情報を得るためのGPSは重すぎて装着できません。しかし、技術は日々進歩し、それを調べることが可能になりました。それがジオロケーターです。

​ ジオロケーターは色々な情報を記録するデータロガーで、コアジサシには照度と時間を記録するものを使用しました。照度と時間によって毎日の日の出日の入り時間を推測し、そこから緯度経度を算出していくものです。

​ ジオロケーターは、コアジサシのサイズと生態から使用可能な最小のものを検討し、取り付け用のフラッグ込で1.2gまで軽量化しました。これを2013年、大阪、静岡、東京、千葉、茨城において100羽に装着、放鳥しました。

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ジオロケーターの調査でわかってきたことと新たな課題

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 ジオロケーターにより、コアジサシは最短ルートで南下するのではなく、島伝いに越冬地と日本を往復していることが分かってきました。しかし、ジオロケーターの結果は、越冬地についても解明されていない部分があることを浮き彫りにしたのです。ジオロケーターによって示された越冬地は、当初越冬地とされていたオーストラリア南東部ではなく、フィリピンやパプアニューギニア、そしてオーストラリア北東部でした。

 ジオロケーターの結果は誤差が数百キロに及ぶため、ピンポイントで越冬している場所を特定するには至っていません。これでは越冬地が開発や密猟によって脅かされ、コアジサシに大きな影響が出ていても、それを把握することができません。そこで、2015年にはピンポイント情報を得ることができるGPSロガーを試験的に装着し、2016年には関東、福岡、沖縄で、のべ74羽に装着しました。

 

 GPSロガーは回収しなければデータを取れないため、装着した個体を探しています。GPSロガーを装着した個体には黒いフラッグを左脚に装着しています。ジオロケーター装着個体に加えて、黒いフラッグを着けた個体をもし見かけられましたらご一報ください。情報をお待ちしています。

連絡先 

(公財)日本鳥類保護連盟 調査研究室 担当:藤井
Tel: 03-5378-5691  E-mail: research☆jspb.org
☆は@に置き換えてください)
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白いフラッグと青いフラッグ付きのジオロケーター
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ジオロケータを装着した個体
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GPS装着個体の目印となる黒いフラッグ 
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GPS装着個体
協力:NPO法人リトルターンプロジェクト、水鳥研究会

※本事業は三井物産環境基金の助成を受けて実施しています
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本事業は三井物産環境基金の助成を受けて実施しています
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