ニホンヤマネ
- 一般社団法人ヤマネ・いきもの研究所
- 5月2日
- 読了時間: 5分
更新日:1 日前

●ニホンヤマネのこと
「ヤマネという動物を調査しています。」そう言うと、「ヤマネコですか? それはすごいですね!」と言われることがあります。「いいえ、ヤマネコではなく、ヤマネっていう小さな動物で…」そこから会話が始まることもある動物、「ニホンヤマネ」という哺乳類は日本の森の中に暮らしています。私たちは、このヤマネという動物を研究し、保護・保全、そして教育へつなげる活動をしています。
今日はヤマネの魅力と彼らを守る活動について少しだけ紹介したいと思います。
●ヤマネの基本(写真1)
ヤマネは正式には「ニホンヤマネ Glirulus japonicus」と言います。日本に510万年前にはすでに生息していたと考えられている、古くから日本に暮らしている動物の1つです。日本の固有種で、国の天然記念物に指定されています。よく、ネズミやリスと間違えられることがありますが、彼らとは違うグループで、ヤマネはげっ歯目ヤマネ科に属します。日本の森に暮らす樹上性の動物です。しかも夜行性で、小型のためその姿を目にする人は少ないです。どのくらい小さいかというと、大きさは、鼻先から尻尾の先までで約13㎝で、活動期の体重は約18gと鶏卵よりも軽い小型の哺乳類です。そして、冬には冬眠をします。
見た目の特徴は、背中に黒い線が1本入っていて、尻尾にはふさふさとした毛が生えています。
魅力その1:かわいい(写真2)
ヤマネは研究者がひいき目に見てもとてもかわいい動物です。出会った人はたいてい「かわいい!」と言ってしまいます。正面から見るとくりくりとかわいらしい目の周りには黒い毛がアイシャドウのように生えています。冬眠しているときにはボールのように丸くなり、赤ちゃんのように手をぎゅっと握って眠ります。皆さんにもこのヤマネのかわいさを知っていただきたいです。

魅力その2:体に隠されたたくさんの秘密
ヤマネには秘密や生きるための工夫がたくさんあります。ここで、ヤマネの秘密を一部紹介します。
秘密① 「写真、逆さまですよ」と言われることがあります。いいえ、枝の下にヤマネがいるのが正解です(写真3)。ヤマネは枝の下にぶら下がってするすると移動します。しかも、逆さまのまま食餌をすることができます。私たち人間だったら難しいですね。ちなみに、ヤマネと体の大きさが似ていて、木の上も生活圏にしているヒメネズミは枝の上を歩きますし、ヨーロッパに棲んでいるヨーロッパヤマネも日本のヤマネと体の大きさが近いですが、彼らも枝の上を移動することがとても多いです。

秘密② 背中に黒い線があるのは現在では日本のヤマネだけ!ヤマネとネズミを見分ける簡単な方法、それは、背中に黒い線が‟ある”か‟ない” かです。そして、世界にいるヤマネの中でも背中に黒い線があるのは、日本のヤマネだけです(写真4)。

秘密③ 冬には体温を0℃近くまで下げて冬眠をします。彼らは食べ物がない冬の時期を眠って過ごします。その中でしている工夫の1つが体温をとても低くしてしまうということです。冬眠からさめているヤマネの体温は34~37℃なので、体の中ですごい変化を起こしていることがわかります。
魅力その3:色々な生き物と関わっている動物
森に暮らすヤマネは森の色々なものと関わっています。例えば、食べるものでは、花の蜜や花粉や柔らかい果実、そして、ガやアブラムシ(写真5)などの昆虫を食べます。これらは長年の調査研究で解明してきたことです。これらの森のものがヤマネの命を支えています。そして、ヤマネの天敵は森に暮らすテンやフクロウなどですが、彼らの命を支える役割も担っています。
このように、日本の森にはヤマネも含めてたくさんの大切な生きものが関係しあいながら生きています。彼らは森の生態系を守ってくれていて、私たちが暮らす日本の森が守られています。その役割をヤマネも担っているのです。ひっそりと。

●ヤマネから考える保全活動
小さな生きものたちの保全・保護については見落とされがちです。でもそのような小さな命を守ることは、私たちの暮らす環境を守ることにつながっていきます。そのためにヤマネを通して守る活動を多くの仲間と共に展開しています。その1つは、木の上に暮らす動物のための橋を作るという活動です。
日本にいる木の上に暮らす動物はいくつか挙げられると思いますが、私たちが対象にしているのはヤマネやヒメネズミ、リスなどの小型の哺乳類です。彼らは、道路などができることでその生活が脅かされますが、そこに目を配った活動がされていませんでした。そこで1998年、ヤマネの研究者の湊秋作さんは森が道路で分断される場所に森と森を行き来できるヤマネのための橋、ヤマネブリッジ(写真6)を山梨県の道路公社と共に建設しました。

そこから派生して、現在は様々な企業の皆さんと共に開発してきたアニマルパスウェイ(写真7)と命名したつり橋も展開してきています。

これからもこのような橋を広げていく活動を続けていきたいと考えています。
一般社団法人ヤマネ・いきもの研究所について
私たちはヤマネについて調査研究を行い、その成果を保全保護活動や教育につなげていますが、それ以外の普通の種である生きものについても同様に実施しています。里山の鳥の調査や水路の生きもの調査なども実施しています。なぜ、普通の種なのか、それはヤマネの活動を全く同じで、私たちの身の回りにいるような、カエルやトンボなどの生きものたちが私たちの暮らす環境を支えてくれていると考えているからです。そんな、私たちの活動を紹介していますので、ご興味のある方はHPを見に来てください。
【クラウドファンディング挑戦中!~6月30日(月)午後11:00まで)
守ることは知ることから。森の象徴ヤマネと豊かな自然をともに未来へ