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【学校名】

高校

愛知県立新城有教館高等学校作手校舎

【活動タイトル】

愛知県立新城有教館高等学校作手校舎

生物補完計画
―身近な生物を知る・守る・繋ぐ―

【活動内容】

 作手校舎では地域の自然環境を題材にした授業を展開している。
2022年度の1年次に科目『農業と環境』で水質階級調査や生物調査を体験した。学びの中で、環境省のレッドリストに記載される絶滅危惧ⅠBのホトケドジョウや準絶滅危惧のコオイムシなどが観察され、貴重な生物環境であること知った。しかし、貴重生物と同じ場所に条件付特定外来生物であるアメリカザリガニが確認された。調べ学習や地域の方々との話の中で、貴重な在来種を捕食することがわかると共に、昔は生息していなかった場所にまで生息域を広げていることがわかった。この現状から作手地域の生物環境を守り、将来へとつなげていくために2023年から独自で生物調査を開始した。

 調査範囲は作手地域に加え、私たちが生活する新城市内にも設定した。結果、作手地域では14種の絶滅危惧種の観察に成功した。新城市内からは愛知県初記録となるミカドテントウ(京都府レッドデータブック:絶滅寸前種)が採集され、この地域には貴重な生物が多く生息していることが判明した。それと同時に水生生物を採集する際、アメリカザリガニも数十匹捕獲でき、地域に定着しており対策の必要性を感じた。また、詳しい生物環境を学ぶために作手地域のトンボの観察会に参加した。そこでは準絶滅危惧のモートンイトトンボをはじめとした14種のトンボが観察できた。しかし、講師を務める内藤信司先生からは、以前は60種以上見られたが気候変動や外来種の影響で大きく減少していることを学んだ。この経験から生物環境の保全が急務な課題であることがわかり、地域等と連携した課題解決に向け、以下の活動に取り組んだ。

 第一に、ミカドテントウに関して、希少種の存在を全国的に発信し、保全につなげるために論文発表を行った。愛媛大学の吉富博之教授、人間環境大学の久松定智准教授に御連絡をとり、ミカドテントウに関する情報や論文添削をしていただき、2023年10月にウェブ雑誌『ニッチェ・ライフ』にて論文を発表した。

 第二に、作手地域の生物環境の保全に関して、地域の課題解決などの活動を支援する作手地域活動交付金事業を展開した。作手自治振興事務所と相談し、企画書の提出や地域住民へのプレゼンを行い、2024年度から事業展開することが決定した。2024年度は「生物環境の変化を知る」をテーマに外来種を用いたワークショップを企画した。作手地域の方々に呼びかけ50名程度が参加し、作手地域の生物環境の変化を体験的に伝えることができた。2025年度は、「身近な生き物を知る」をテーマに生物の観察会を実施している。6月22日に水生生物の観察会を実施した。捕獲罠をため池等に設置しそれを回収しながら捕獲された水生生物を観察した。同時に、アメリカザリガニ駆除も行い、水生生物の生息環境について考える場とした。駆除方法は環境省が作成した「アメリカザリガニ対策の手引き」を参考とし、2023年から学校行事として行っているアメリカザリガニの駆除活動のノウハウを生かし、安全な方法で実施した。また、8月17日に陸上生物の観察会を実施した。昆虫類を対象に多種の昆虫を観察できるようトラップを作成し、捕獲された昆虫を観察した。作成したトラップは、飛べず地上を歩く昆虫を捕獲するベイトトラップ、飛翔する昆虫を捕獲する空中設置型のFitトラップであり、合わせて10か所に設置した。

 第三に、生物多様性の情報発信活動である。一般社団法人食医・食農・食育推進協会と連携して7月から毎月第4日曜日に名古屋市農業センターでワークショップ及び活動パネルの展示会を実施している。7月、8月はこれまでの活動についてパネル展示を行い、作手地域の生物環境や外来種問題について発信を行った。9月以降は名古屋市の生物多様性を学ぶワークショップを実施予定である。

REPORT

✨活動PR資料


【活動による成果・効果または活動によって今後期待できること】

 私たちが発表した愛知県初記録となるミカドテントウの論文が、京都府立大学学術報告『生命環境学』で発表されたミカドテントウに関する研究において、引用文献として使用された。このことから、ミカドテントウに関する分布の知見として有意義であることがわかり、全国的なミカドテントウの保全に貢献できた。

 生物観察会には作手地域の方以外にも、興味をもっていただいた新城市外の方も来られ、2回実施し16名の方が参加した。水生生物の観察会では、絶滅危惧IBのホトケドジョウや準絶滅危惧のトノサマガエルをはじめ12種の生物を観察することができた。同時に実施したアメリカザリガニの駆除は5匹の駆除に成功した。観察会を通じて、アメリカザリガニが繁殖するため池からは絶滅危惧種が観察できなかったことから、外来種による影響を体験的に学び伝えることができたと感じている。また、陸上生物の観察会では他地域で減少傾向にあるオオシオカラトンボやハグロトンボをはじめ14種の昆虫が観察できた。この活動は中日新聞から取材を受けており、9月1日に掲載された。さらにこの記事を見た地元の方から御連絡をいただき、貴重な生物の生息情報や写真の提供をいただくことにもつながった。

 名古屋市農業センターでのワークショップ及び活動パネル展示について、7月、8月は活動パネルの展示を行った。大人から子供まで幅広い方々と話をしながら見ていただき、身近な生物環境や外来種問題について興味関心を促すことができた。9月以降は、名古屋市の河川敷で大量繁殖している総合対策外来種のフェモラータオオモモブトハムシを活用した樹脂封入標本キーホルダーづくりのワークショップを開催予定である。本種は食用昆虫科学研究会と連携して定期的に駆除しており、その個体を活用する。毎月第4日曜日に定期開催が決定しており、継続的に広く情報発信することにつながる。

 作手校舎は2030年3月をもって閉校することが決定している。そのため、学校閉校までに保全活動の主体を地域へと移行し、継続的な保全活動とすることが最終目標である。私たちは、これまでの活動を新城市長に報告を行っている。その中で私たちの活動を新城市の環境基本計画に盛り込まれることが決定した。現在、新城市に活動方法や結果のデータを提供している段階である。今後、新城市の保全計画として確立されるようにさらに話し合いを進めていく。また、貴重生物が生息する作手地域の生物環境を、国が認定する「自然共生サイト」へ申請していく。今年度中の申請を目標にしており、実現することで世界的に作手地域の生物環境を発信することにつながり、保全意識の向上に結び付くと考えている。

 私たちの活動は学校閉校と共に終わりを迎える。そのため、保全活動を地域の活動に変えていくことが私たちの使命である。このことは他地域でも起こる可能性はあり、活動をモデル化し、公開していくことで全国的な保全活動にもつなげていく。

【アピールポイント(活動において特に工夫したこと、注意・注目したことなど)】

 私たちの活動は身近な生物に目を向け、改めて生物多様性の大切さや環境保全の重要性を伝えていくことに重点を置いている。そこで、活動では身近な生物を題材にした観察会やワークショップを企画し、より身近に生物を感じてもらえるように取り組んでいる。生物観察会では、絶滅危惧種の観察を取り入れることで、貴重な生物が身近に生息していることを知るきっかけづくりを目指している。

 また、行政と連携した作手地域活動交付金事業として行うことで継続的な活動とすることができた。ワークショップでは、外来種をただ駆除するだけでなく一つの資源として捉え活用している。樹脂封入標本キーホルダーやスノードームづくりを通じて、楽しく作りながら外来種に触れ体感・体験的に学ぶ機会の提供につなげている。

 今後は、外来種を食料資源としても考え、その利用方法について模索している。現在、食医・食農・食育推進協会代表の長谷川義洋様と話を進めている。

​【学校ホームページ】
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