【活動内容】
①猛禽類調査
サシバ、オオタカ、ハチクマの三種を中心に、生息状況を把握するため、基本的には繁殖活動をしているペアを探した。冬季は森の見通しがよくなるため、巣痕を捜索した(猛禽類は毎年、同じペアが同じ巣を繁殖に使うことが多いため)。春は猛禽類が南から渡ってきて、ペアを作ったり縄張りを確認したり子育てのための餌持ち飛行をしたりと活発に行動するため確認しやすい時期となる。夜明けから数時間が最も活発に行動するため、早朝に捜索活動を行なった。巣内育雛の終わった6月中旬以降幼鳥が巣の近くを飛び、狩りの練習をしたり、親に餌をねだったりする。またハチクマはサシバ、オオタカに比べ繁殖活動がゆっくり始まるため、この時期に餌持ちを見ることも多く、集中して捜索した。
②昆虫相調査(生物調査)
猛禽類が生息する自然環境が本当に多様な生物相が見られるか、安房地域の現状を調査するため、サシバ繁殖地の生物相調査を開始した。昆虫、水生生物、脊椎動物、その他生物など、猛禽類が餌とする生物は幅が広い。また、定性的な調査だけでなく、定量的な調査も必要である。同時に行うことは難しいため、まずは、定性的な調査として昆虫類を中心に生物調査を開始した。
③グリーンカーボンのブランディング
本年度、里山未来拠点形成支援事業に登録されたため、改めて重要里地里山における環境的課題と社会経済的課題を統合的に解決しようとする活動として位置付けた。生物多様性を可視化するため猛禽類調査と昆虫相調査を行った。
また、森林再生活動にも取り組み、CO2削減だけでなく生物多様性も維持する森の実現を目指している。
④広報活動
富山学園中学校への出前授業、SDGs未来甲子園千葉大会、ジャパンバードフェスティバル環境学会、千葉県生物学会研究発表会、里海博(館山)、安房六軒高校会議、長狭高校科学部交流会、海辺の自然再生・高校生サミットなど発表会や情報交流のための集まりに積極的に参加したり集まりを企画したりして情報発信に努めた。
REPORT
【活動による成果・効果または活動によって今後期待できること】
猛禽類調査では営巣を行っている環境を複数地点で確認、昆虫調査では雑木林を利用する大型甲虫、水田を利用する中型の水性カメムシ、清流に棲むゲンジボタルなど環境の指標となる生物を確認できたことから、安房地域にはとても豊かな自然が残っていることがわかった(REPORT資料参照)
この調査は始めてから3年目となった。しかし、今後も継続した調査を続けることが必要である。また、生物多様性を証明するためには猛禽類、昆虫だけでなく、脊椎動物や水性生物、植物などの調査が必要である。さらに、グリーンカーボンクレジットとしての認定を受けるためには、森林整備活動も計画的に行う必要がある。
熊本県ではアマモという海草によるJブルーカーボンクレジット(以下JBクレジット)が認定された。これは熊本県立芦北高校の生物部が活躍し、漁協、自治体、企業と連携することで創出されたもので、高校生の長年の活動や地域との連携が評価され、通常1トン5〜10万円程度で扱われるJBクレジットだがこのJBクレジットは1トン15万円で地元企業を中心に扱われる予定となっている。同様にk安房地域のこの取り組みも、今後、館山市・南房総市や地元企業との共同活動を実現することで、カーボンクレジットのブランド化(ブランディング)を実現できると考える。
各種発表会への参加、出前授業の実施、里海博2023の運営、安房六軒高校会議、海辺の自然再生・高校生サミットなどへの参加によって活動の輪を広げ、情報発信を行うことができた。
生物多様性を総合的に評価することができ、さらにカーボンクレジットの認証を受けることができれば、自然豊かな地域として、自然と共生する街づくりが地域の基盤産業として位置付けることができ、生態系保全と地域活性化の両方を実現することができると期待する。
【アピールポイント(活動において特に工夫したこと、注意・注目したことなど)】
地域の専門家の方と一緒に地道に調査活動に取り組みました。猛禽類調査のときに注意したことですが、鷹はとても目が良いので100mくらい離れていてもこちらを見ています。特に繁殖の時期は猛禽類にプレッシャーを与えないよう、遠くから見守りました。それでも嫌がられた時は、あえてどうどうと立ち去る姿がわかるように立ち去って、鷹たちが安心できるように配慮しました。
また、子育てがひと段落した後に、巣があることを確認するための踏査(森の中を歩いて調査する方法)は道なき道を行くとても大変なものでした。巣がみつかったときの喜びはとても言葉ではあらわせません。
昆虫調査は後から後から様々な種がみつかりました。それは楽しくもあり、終わりのない調査で大変でもありました。調査の専門家の方の協力や、昆虫が好きな部員が頑張ってくれて、かなりの詳細の調査とすることができました。
この活動は、生物の調査だけでは完成しません。現在は調査活動を行っているだけですが、一緒に活動している地域の方々は自治体や企業と協力体制を取れるよう、日々活動をしてくれています。私たち高校生が一緒に活動することで、皆さんが嬉しそうに「ありがとう。これからもよろしくね。」と笑顔になってくださいます。地域全体が一丸となって生態系保全に取り組む接着剤としての役割を感じています。また、私たちの地域には大学がありません。地域の学問の府として、まだまだ未熟ですが、科学的な検証をするお手伝いができたら、私たちの勉強にもなるし、地域の活性化にもつながるのではないかと考えています。




















