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【学校名】

神奈川県立上溝南高等学校

【活動タイトル】

ホトケドジョウの保全活動〜ホトケドジョウをほっとけない!!〜

【活動内容】

 本校の生物探究部では、学校近くを流れている相模川支流の八瀬川のモニタリング調査を通して、ホトケドジョウの保全を目的に活動しています。部活の発足は令和元年度と歴史の浅い部ですが、令和3年度から毎年コツコツとモニタリングを続けています。当初は採集調査を行い、河川水質データとともに採集した生物の同定と重量及び体長などのデータを取得してきました。その際、国外外来種のアメリカザリガニと国内外来種のカワムツはリリースせずに持ち帰るようにしています。調査は神奈川県内水面水産試験場の方にレクチャーを受け、それを基にした方法で行っています。

 また、令和4年度より、神奈川県の河川モニタリング調査の県民調査員にエントリーし、神奈川県環境科学センターのご協力のもと、環境DNAを用いて八瀬川について理解を深めてきました。令和5年度は、この環境DNAの技術を用いて、八瀬川10地点のホトケドジョウの生息密度分析を行い、どこに多く棲息しているのかについて見当をつけました。今年度は、生息密度の高いと思われる地点でもう一度採水し、採集が可能な地点では採集調査も実施しました。採水したサンプルは年内に分析予定です。

 今年度は中谷医工計測技術振興財団より科学振興助成金を贈呈いただきました。この助成金を活用して、昨年度採水した多地点サンプル中のアメリカザリガニとゲンジボタルの環境DNA分析を行うことで生息密度を分析し、ホトケドジョウの生息密度と相関がないかを探る計画を立てています。

REPORT

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【活動による成果・効果または活動によって今後期待できること】

 期待される効果は、大きく2つあると考えています。1つ目は、一連の調査とまとめを自分達で実施するという経験ができることです。初めは中々難しかったようですが、データをグラフ化する力は、先輩から後輩へと受け継がれるようになってきました。また経験は、生徒に身近な自然の生態系を明らかにする面白さを感じさせ、その自然に対する愛着を持たせることに繋がると考えています。そして、地域の自然のみならず地球全体の自然環境を保全したいという姿勢にも繋がることが期待されます。2つ目は、外部機関・組織との連携による効果です。生徒にとっては教員以外の大人と継続的に関わる数少ない機会であり、社会とのつながりを感じられる貴重な時間となります。この経験から、自然環境の保全に関わる仕事を将来の進路選択の1つとして視野に入れるといった視野の広がりが期待されます。実際、部の創立以来3名の生徒が環境分野へ進学し、今年度もその分野への進学を希望している生徒がいます。

 この活動により、先輩から後輩へとバトンを受け継ぎながら、八瀬川について随分理解が深まってきました。今後は、部の取組について双方向コミュニケーションが取れる方法で発信していくことが期待されます。自分達の取組について多くの人と意見交換を行う経験ができれば、生物多様性や生態系サービスに関して多くの人に知ってもらえると同時に、部活動を通して達成感を得られると考えられます。

【アピールポイント(活動において特に工夫したこと、注意・注目したことなど)】

 採集調査と環境DNA調査の両面から八瀬川について理解を深めようとしていることが工夫点です。採集調査だけではどう理解すれば良いか中々見えてきませんでしたが、環境DNAを活用することで生物相の把握が進み、八瀬川におけるホトケドジョウのホットスポットも見えてきました。

 また、いずれの調査も、外部機関・組織との連携により実施していることも工夫点です。具体的には、採集調査の方法や分析については、かながわ淡水魚復元研究会の勝呂様と嶋津様に、環境DNAについては神奈川県環境科学センターの長谷部様にご協力いただいています。正式な調査方法を学べることや、最新の技術に触れることができる他、専門家との交流は、生徒自身が生物多様性の重要性について考えるきっかけとなりました。今年度は自分たちの行なっている保全活動の意味や価値について部内で考えを共有しました。生徒たちの出した答えは次の通りです。「自然環境は変化するものであるが、人間による環境改変のスピードはその変化をはるかに上回る。生物多様性を保全する活動は、多くの生物と共に生きていくために、人間の活動で不安定にしてしまった自然環境を、人間の責任で維持したり、変化の速度を緩めたりする意味や価値があるといえる。外来種も不安定要因のひとつで、人間が持ち込んだものであるから、人間の責任で取り除くべきである」この考えを共有したことで、より一層活動への意欲を持つことができるようになりました。

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