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【学校名】

中学校

岡崎市立東海中学校

【活動タイトル】

岡崎市立東海中学校

未来へつなぐ襷 
~地域に生きる仲間として生態系を守る~

【活動内容】

 かつて学区にあったため池に生息していた、市内で野生最後と言われた絶滅危惧IB類のカワバタモロコを保護し、中学生が掘った池で保護を始めてから30年以上たちました。山から流れてく河川の水を取り入れ、さまざまな生物が訪れる自然豊かな池を保全し、カワバタモロコをはじめとする多くの希少生物が暮らす生態系を受け継ぎ守っています。また、温暖化や人間活動から受ける影響に備え屋内水槽で繁殖活動を始めてから、今年で3回目の繁殖期を迎えました。カワバタモロコは、今年も5月半ばから毎日のように産卵を続け、ふ化後は仔魚から稚魚へと順調に成長しています。次の時代を担うカワバタモロコたちは来年夏に保護池に放流します。昨年はカワバタモロコの他にも保護しているウシモツゴ、ミナミメダカ、ホトケドジョウが産卵、ふ化しました。毎日欠かさず観察してきましたが、今年はホトケドジョウの稚魚の確認はできませんでした。ウシモツゴとミナミメダカは昨年生まれた個体が成魚となり繁殖に参加し、今年の稚魚たちも大きく育っています。まだしっかりとした記録がない魚もいますが、それぞれの魚たちの生態を調べ、活動の中で気づいたことを記録し、今後も繁殖方法を先輩から後輩へと引き継いでいます。

 また、昨年の秋には、依頼を受けて地域の小学校でカワバタモロコの飼育についての説明会を行いました。その時、小学校の「カワバタモロコが2匹になってしまったけれど卵を産みますか。」という質問がありました。雄雌が不明で、遺伝的なことを考えると、繁殖は難しいだろうと伝えました。その後、小学生がどうするのか話し合いを重ねた結果、カワバタモロコの譲渡依頼がありました。地域の複数の場所で協力して保護していくことは、カワバタモロコにとっても、地域にとっても良いことだと考え、池や水槽から選んだ20匹ほどを譲渡しました。現在、小学校で元気にしていると聞き安心しています。

 しかし、カワバタモロコを未来へ繋いでいくためには、ただ数を増やせばよいわけではありません。個体数が減った問題が解決されただけで、生息できる環境がないという大きな問題の解決にはなっていません。そのうえ、私たちの保護池にも大きな不安があります。豊かな生態系を生み出している保護池ですが、その土地は実はご厚意でお借りしている土地で、そのうえ土砂災害警戒区域になっています。温暖化が原因とされる集中豪雨が多い近年はその危険性が増しています。最近では少し続いて雨が降ると、池の脇の河川は上流で氾濫を起こします。頻繁に起きる氾濫は保護池に土砂の被害をもたらすため、私たちは何度も池の浚渫作業を行ってきました。しかし、池に何かあってからでは遅いので、屋内での繁殖を目指したのと同じ頃から、上流で何が起きているのか調査を始めました。河川の途中は土砂や倒木で埋まり、雑木林となった休耕田には氾濫水域ができていました。あるはずのため池はなくなっているということも確認しました。これは、耕作放棄により里山が機能を果たさなくなったということです。カワバタモロコたちを守る保護池を保全するため、河川の状態を何とかしようと試みましたが、ほんの少しの部分を修復するだけでも手作業では大変でした。不安定な状態の氾濫水域に河川の魚たちが生息していることも問題でした。そこで、土砂で埋まり氾濫した河川と氾濫水域が広がる休耕田を元に戻すため、魚たちの繁殖期ではなく大雨の被害が少ない1月、市に修復の依頼をしました。いろいろな課に困っていることを伝えると河川課の方が視察に来てくれました。河川課の方が持って来た資料にもため池があり、河川が流れているとありました。状態を見てもらった結果、修復は重機を入れる大掛かりな工事になり、予算の関係ですぐにはできないという返事がありました。池で保護している魚は岡崎市の絶滅危惧種のカワバタモロコたちで、このままでは命が危険であると訴えると、後日、池のそばの河川十数メートルほどに土のうを積んでいただけました。そこで私たちは、保護池とその周辺の生態系の問題解決へ向け、いつ工事が始まってもよいように、氾濫水域の流れが消滅して生息域が分断されるかもしれない場所に生息するホトケドジョウ、ヨシノボリ、エビの保護を始めました。河川から新たに入って来る魚はいるけれど、既に入ってしまった魚の数を冬の間に減らそうと考え保護し続けました。春以降の大雨では、上流部分で氾濫した流れが、休耕田から保護池に濁流となって流れ込みました。魚たちも一緒に流されてきます。池の保全と氾濫で水たまりにとり残され、命が尽きるのも時間の問題となった魚の保護を行いました。屋内では繁殖が始まり、忙しい夏になっても工事が始まる様子がないため、手作業では無理だと大人たちから言われていた河川の修復を、自分たちの手で行うことにしました。人間が築いたため池の修復は無理ですが、河川の方は人工的な完全な形ではなく、自然が生み出す形なら流れは戻せると考えました。氾濫部分へ流れ込む始まりがどこからなのかを調べ、段階的に水を止める計画を立てました。山から落ちてきた石や土のうを用いてほぼ堰き止めることに成功し、土砂で埋まっていた河川に元のような流れを取り戻すことができました。その後、わずかに流れを残しておいた氾濫水域で再び魚たちの保護を行いました。堰き止める作業時に、石に産みつけられ間もなくふ化しそうなヨシノボリの卵を発見しました。その後、無事にふ化したようで、堰の周辺で1センチほどのヨシノボリを何匹か保護できました。今回の保護活動は、生息水域が分断され、水の供給が止まってしまった場合に、自らの命を守るため移動することができない魚などに限って行いましたが、冬から夏の間にたくさんの水生生物に出会えました。ヒメタイコウチ、ヤゴ、トビケラの幼虫、サワガニ、カワニナ、ヒキガエルの卵塊などでした。氾濫水域は不安定でいつ消滅するかわかりません。保護池のすぐそばの笹藪の中にもかつては氾濫水域であったけれど、今はただの深い水たまりになっているところがあり、魚がいます。地下水がしみ出すのか干上がってはいませんが、今年の夏のように雨が何日も降らない夏は危険です。このようなほぼ人間が入らない山あいの河川でも、人間活動の影響で魚たちの命に危険が及んでいることになります。もし、土砂災害が起きれば、もっと多くの種類の生物の命が奪われます。それを少しでも救うことが、私たち下流で水を利用する人間の責任だと感じました。

 そして、この河川はさらに下流で国道1号線を越え、1級河川鉢地川に合流します。鉢地川の水は昔から田んぼに利用されており、池のそばと同じようにヨシノボリが泳ぎ、カワニナが多く蛍が舞うきれいな川です。この合流地点は、この秋に開業する大型商業施設が建設されている場所です。私たちは環境への影響が心配になり、昨年から河川の調査を行ってきました。水質や指標生物等、生息する生物を調査してきましたが、現在のところは特に影響は見られずきれいな川と判断でき安心しています。しかし、調査をしてきて、今まではなかったゴミが春には多く見られるようになったことに気づきました。建設工事とは関係のないゴミです。人間の意識の問題なのかもしれません。そのため、調査時にはゴミの回収を行うようにしています。現在施設の開業へ向けて敷地内だけでなく道路拡張工事なども行われています。交通の便が良くなり、多くの人が訪れ、地域には活気が出ると期待されています。反面、今までの自然環境が失われることを心配する声が多くあります。河川調査を行っていると地域の方から声をかけられます。調査の理由を話すと、やはり同じように環境を心配する声が聞かれます。動き始めた地域の変化に対応しながら、私たちは中学生としてできることを行い、地域に発信していかなければならないと考えています。          

 昨年この川の調査時に特定外来生物のオオフサモを見つけました。堰き止められていた農業用水と一緒に流されたのか現在はなくなっています。しかし、思いもよらず近くに特定外来生物は侵入してきていました。それは、保護池近くの墓地とその周辺に咲いたオオキンケイギクでした。今年、目を疑うほどたくさん咲いていて、周りの様子と比べて普通ではないという印象を受けました。保護池とは休耕田を挟み離れていますが、いつ保護池周辺にも侵入してくるかわからない状況でした。駆除の仕方を調べ1本1本手作業で丁寧に根から抜いていきました。墓地や土手の高い場所は抜くことができませんでしたが、周辺の道路脇などは取れる限り抜き取り袋に詰め、数日間日光に当てて枯らしてから可燃ごみとして廃棄しました。墓地にきれいに咲いていたことから、供花として知らずに持ってこられたものではないかと考えました。この場所は、野生のイノシシやシカが山から下りてくる時に通る場所なので、種などを野生生物が他の場所へ運ぶ可能性があるので心配です。私たち自然科学部は、カワバタモロコの保護を通して環境について学び、特に意識しているので、小さな環境の変化に気づくことができるようになっています。気づいたことを地域へ発信していくことが地域の環境を守るため、私たちに与えられた大切な役割だと思っています。まずは、校内、そして地域へと広める方法を検討中です。

 私たちの地域には、貴重な生物の宝庫である湿地群北山湿地があります。ここは、ルールを守って誰でも自由に散策することができます。市の環境保全課、ボランティア団体によって計画的に定期的に保全されおり、私たちも地域の環境を守るために保全活動に参加させていただいています。湿地を守るために狭い場所の草刈りなど手作業でしかできないことや力が必要な木の板の運搬など、できることをさせていただいています。活動中には、湿地の動植物について教えてもらうことが多くあります。私たちの学校も、戦後から鳥の保護をしていたという記録があるくらい野鳥の多い学校ですが、普段は気に留めていないので、北山湿地でボランティアの方も見るのが珍しいオオルリに出会えました。とてもきれいな青い鳥でした。そんな守るべき場所でも、心無い人間の破壊行為があるということを知りました。この場所は、生態系として重要なこと、定期的に保全し、見守り活動を行っていることなどを地域に知らせ、より多くの人で守っていけるようにしていかなければならないと感じました。学校から遠い山の中まで、自転車で40分ほどかかるので大変ですが、月に1度の活動に積極的に参加しています。私たちが湿地の保護活動で学んだことは、気づかないうちに地域の環境を守るために必要な知識や技術となって私たちの活動全体に対する考え方などに生かされていることを折に触れ感じています。

REPORT

【活動による成果・効果または活動によって今後期待できること】

 カワバタモロコの屋内水槽での繁殖は、昨年と同じ5月半ばから始まり9月に入っても続いています。記録によると、産卵は水温が20℃を超える頃、日長時間は14時間を超える頃から始まりました。昨年も同じような記録が残っているので、おそらくこれが私たちの保護するカワバタモロコの屋内水槽でのサイクルになると考えられます。記録が残されているので、初年度のような不安はなくなり、今後もこの記録を受け継いで活動していけば安心です。屋内でも近年の温暖化の影響を受けて水温が高くなっているので、今後何か問題が起きてもこの記録をもとに活動していくことができます。問題点と対策は記録として残しているので、昨年の問題点には初めから対策を行うことができました。他の保護している魚たちの繁殖についても新しい観察記録が残せました。ウシモツゴの屋内水槽での繁殖は昨年と少し違いました。昨年は、カワバタモロコと一緒に大きな水槽にいたウシモツゴが素焼きの植木鉢に産卵しました。今年は、ウシモツゴだけの水槽で、昨年と同じ素焼きの植木鉢と保護池の周辺で拾ってきた石を積み、空間を作ったものを何カ所か水槽内に設置してみました。約1か月の間にウシモツゴは5回ほど産卵の確認ができたのですが、一度も素焼きの植木鉢に産卵することはありませんでした。空間の上部にある平らな石に卵を産み、昨年同様に常にオスが卵を守っていました。オスが世話をする途中で、間違って育っている卵も食べるということがあるらしいので、減ってきたところで取り出して他の水槽に移しました。ウシモツゴはカワバタモロコよりも産卵期間、産卵数が少なく、ふ化率もよくありません。ふ化しても途中で死んでしまうものが多く、成長率を上げることが課題です。取り出した卵からふ化した稚魚の成長率もよくはなかったのですが、親のいる水槽で見えない場所にも産卵していたらしく、3匹の稚魚が元気に育っていました。親水槽にはろ過設備があるので、被害に遭った稚魚もいたかもしれませんが、3匹はとてもよく成長し、2か月で見た目もウシモツゴになりました。石を多く配置し、親に新鮮な水を送り世話をしてもらい、ふ化してからろ過設備に吸い込まれないような石と石の隙間に逃げ込む場所のあるレイアウトにすれば、親と同じ水槽で多く繁殖できるかもしれません。展示水槽でもあるので、ウシモツゴは隠れてしまって見つからないことが多いのですが、魚が見られなくてもこんな環境が必要なのだとわかってもらうためには自然の環境に水槽内を近づけることが大切だと思いました。そして、地域の魚たちを保護し未来へ繋いでいくためには、地域に残された自然環境を保全していくことが地域の今後の大きな課題だと強く感じました。

 このように繁殖は毎年工夫を重ね、年によって異なる状況にも対応し、安定した屋内繁殖ができるようになりました。観察なども丁寧に効率よく行えるようになったので、2年前ほど時間をかけずに行えるようになりました。屋内水槽では個体数を確保しつつ、繁殖期以外はもちろん、繁殖期でも時間と心に余裕ができました。そこで、このゆとりを生かし、今まで大きな課題であった池周辺の生態系の保全に冬から本格的に取り組みました。以前から河川の氾濫原因については、草が枯れ、木々の葉が落ち林の中に入りやすくなる秋から冬を中心に調査を行ってきました。保護池のそばの河川がどういう状態かわかっていましたが、秋から冬は部活動の時間が短くなってしまい、思うように保全活動ができませんでした。そのため、保護池に近い部分だけを修復していました。そのうえ、上流の魚は氾濫水域にたくさん生息していることがわかりました。氾濫の頻度や程度が年々ひどくなってきたため、集中豪雨がよく起きる台風シーズンを迎えるまでにできる限り早く河川を元に戻すことが必要だと考えました。戻せば、氾濫水域の魚たちは流れが途絶え生きていけないという理由から、池を守るための修復と魚の保護の両方を何とかできないかと考えました。ため池のこともあり行政へ連絡し相談した結果は私たちの希望のようにはいきませんでしたが、河川が氾濫していることや、ため池が既にないということを知ってもらうことはできました。いつになるかわかりませんが、しっかりとした方法で直してもらえると信じています。

 しかし、そんないつかを待つ時間は氾濫水域や保護池の魚たちにはありません。河川が土砂で埋まり木が倒れ、さらに草木で覆われている状態を見ると手作業では無理だと感じられましたが、私たちは、自分たちにできることは何でもやってみるという考えで今まで活動してきたので、まず冬から氾濫水域にいる魚たちを保護し、その後河川を修復してみると決めました。冬に保護していたホトケドジョウやヨシノボリが夏の暑さで死んでしまうというトラブルもありましたが、何もしなければ命は危険にさらされるだけなので、その後は保護池や正常な流れの河川に移しました。保護をしてきたので数は減りましたが、河川からの氾濫が続いたままでは魚たちは氾濫水域に入ってきます。7月に入り少し集中的に雨が降ると、河川が氾濫し池に大きな被害が出始めたため、これ以上は河川も放置できないと考え本格的に修復に取り掛かりました。大雨で氾濫が起きた後の河川の草を刈り倒木を取り除き、土砂の一部を取り除いてみると、元の河川には少し水が流れた跡が見られました。そこで、氾濫の始まり部分へ行って流れの状態や川底の状態を確認しました。川底は思っていたよりも泥が多かったので、泥を取り除き氾濫水域への流れをそこに流されてきていた石で堰き止め、水量の多さを利用して水の勢いにより流れを取り戻すことに成功しました。誰もが、手作業では困難な作業で、簡単には修復できないと考えていたことでしたが、完全ではないけれど修復することができました。魚たちのことを考えると一度に全ての水を堰止めることはできないので、最初は小さな堰を作って氾濫水域への水量を減らし、次は土のうを積んでしっかりとした堰を作るという二段階で行うことにしました。これで氾濫水域への流れは土のうや石の隙間からのみになり、今年の夏はしばらく雨が降らなかったため、数日後には氾濫水域への水量がとても少なくなりました。場所によっては水が溜まって油が浮いていたような場所が干上がっていました。流れはほとんどなくなり、幅も狭く浅くなったため、魚たちの保護がしやすくなりました。しかし、木がたくさん生育している場所は、草も生い茂り中に入っていくことが難しいため、草木の葉が落ちる頃まで待つことにしました。それ以外の場所は保護を続けていきます。9月に市内多くの場所で冠水被害を起こした台風で河川が増水しました。再び河川を土砂や倒木がふさいでしまい、氾濫が起きましたが、土のうを積んだ部分が崩れることはなく、ほぼ越水による氾濫でした。土砂と倒木を取り除くと流れは落ち着きました。今後また豪雨が発生し氾濫する可能性はありますが、以前ほどはひどくならず修復できるだろうと考えています。

【アピールポイント(活動において特に工夫したこと、注意・注目したことなど)】

 カワバタモロコの屋内繁殖では、昨年はいろいろなことが起きました。蚊の発生時期とタイミングが重なったのか、ボウフラが大量に発生し、ヒドラも見つかりました。ふ化して間もない仔魚は襲われ減ってしまったようでした。今年は春の気温が例年よりも上がらず、桜の花もなかなか開花しませんでした。例年は満開後に雨が降ると散ってしまっていたのに、今年は雨が降っても咲き続け、いつもよりも長い開花期間でした。気温が思ったように上がらなかったことで蚊の発生時期が遅れたのではないかと考えています。そして、急激に猛暑がやってきたため、蚊が少なかったと言われています。私たちは昨年からの対策で、産卵床を取り出した容器には網のカバーをかけました。全く発生しなかったわけではありませんが、昨年と比較してボウフラの発生はとても少なく、見つけたものは取り除きました。仔魚が成長すればボウフラに食べられることもなくなります。また、今年は五月に産卵したものは大きめの水槽に入れたので、容器から移す作業による仔魚への負担をなくせました。同じ時期に生まれた個体はしばらく大きさに差がないので、そのまま過ごさせ、緩くエアーを送る装置を付けたので水面に流れができたことも水の流れを好まないボウフラ対策になったと考えています。産卵が長く続き、取り出した産卵床を入れる容器と仔魚容器の数が不足してくると、仔魚たちをまとめるために取り出し作業を行うのですが、その時に数回ヒドラが見つかりました。そのまま洗っても取れないことが多いので、塩水につけてからきれいに洗い流し、仔魚たちを入れるようにしました。気温による偶然とさまざまな対策の効果で昨年よりも成長できた稚魚が多くなりました。屋内水槽は個体数を保つことを目的としているので、仔魚の成長を阻害するものは取り除き水換えなどの仔魚への負担がかかる作業を極力減らしました。餌を食べるようになると、昨年まで試してきた、市販のメダカの針子用餌、乾燥ワムシ、保護池の水などを与えました。最初にふ化した大きめの水槽で育った稚魚は、8月には2㎝ほどに成長し、大きな個体は親のいる水槽へ入れても十分餌を食べていけています。このようなできる対策は行いましたが、猛暑による水温の上昇が良くなかったのか、産卵はしたけれどふ化しないことや、ふ化したはずで天敵もいないのに仔魚が減ってしまうということがありました。成魚も同じですが、水槽の暑さ対策は今後も大きな課題です。

 私たちの活動の中心は、地域の野生生物を未来へ繋ぐため、池や水槽で保護している魚、地域にいる魚や虫、植物などを守ることです。守るためには、当然その生物たちが暮らす生態系を保全しなければなりません。「私たちが守る」という自覚をもって地域の自然環境を見ていると、今まで何とも思っていなかったことが実は問題だということに気づけるようになりました。それは、違和感です。
私たちの住む地域は、国道1号線や名鉄名古屋本線、東名高速道路は通っていますが、山が近く、魚が泳ぐ小さな川が流れ、その水を利用する田畑が広がる自然豊かな地域です。緑が多いこの自然の中、それも私たちの保護池のそばに突然現れた黄色い花を見た時に不思議な感じがしました。おそらく、たいていの人はきれいだと思うだけではないかと思います。定期的に池の様子を見に行き、保全を行う時には周辺も見ていたからこそ気づけたことでした。そして、私たちは活動中、動物でも植物でも知らない生物を見つけた時には人に聞いたり、調べたりすることが習慣になっているので、感じた違和感や不思議さをそのままにせず花の確認に行きました。その段階で既に特定外来生物のオオキンケイギクではないかという疑いをもっていました。いくつかのオオキンケイギクの説明記事と特徴が一致したため駆除をすることにしました。駆除の前に部員間でオオキンケイギクの情報をしっかりと共有し、駆除の仕方も確認したうえで作業を行いました。土地の所有者や管理者の問題が出ないような道端だけしか駆除はできませんでしたが、わずかでも侵入を阻止することはできたと思います。しかしこれはほんの一握りの例で、私たちが河川調査や活動する場所以外で調査を行えば、おそらく野生化している場所はもっとあるだろうと思います。同じようにオオハンゴウソウも園芸種として購入され野生化しているとあったので、今後はこれらを野生化させないということを地域へ知らせていくことに力を入れていくことにしました。
また、保護池では4月に7、8センチの条件付き特定外来生物のアメリカザリガニが見つかり、そのまま放置するわけにもいかず捕獲しました。その後どうするのかを部員で話し合い、処分するのか、罪はないので条件付き特定外来生物だと校内で知らせつつ飼育するのか意見を出し合った結果、知らせるために説明の掲示物を作り飼育することになりました。何日かは元気にいたのですが、突然死んでしまいました。カワバタモロコたちが命を終えた時と同じように埋葬しました。

 水辺の生物では、この地域ではまだ確認されてはいませんが、アカミミガメやカダヤシの問題があります。岡崎市内では既に繁殖が確認されています。市の中心地ではアライグマ、中心地の川ではヌートリアが確認されています。同じ動植物の命なのに区別しなければならないということに複雑な思いを抱きました。私たちのこの思いを伝えることが生態系を守り、外来種の命をむやみに奪わずに在来種を守ることになると思います。
生態系は変化していきます。そこには人間活動が大きく影響しています。地域にできる大型商業施設の建設がそうです。施設の誘致は地域住民の願いでもあったと聞いています。また、環境などへの心配面から反対意見が同じくらいあったことも知っています。施設は今、秋の開業へ向けて進んでいます。酷暑の夏、私たちが河川の調査をしているすぐそばで道路の拡張工事が行われていました。以前と特別に変化が見られない今の状況を今後も維持していかなければなりません。河川沿いの小道を地域住民が川の流れや生物を見て楽しみながら散歩しているという穏やかな風景が、未来にも続いていくように調査を行い、結果を地域の人に知らせていきたいと考えています。私たちの活動には高度な技術は一つもなく、誰でもできることです。ただ地域の生態系を守りたいと願い、活動している中学生がいることを地域に知らせることが、地域全体で生態系の変化に適切に対応していくための一歩になればよいと考えて活動しています。

​【学校ホームページ】
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