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2022
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鳥が捕食者を避けるためのねぐら戦略

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写真1.枝先で寝るズアカアオバト

捕食者を避けるための工夫

 人間と同じように鳥たちにとっても睡眠は必要不可欠なもので、十分に睡眠が取れなければ元気に活動することもできなくなるでしょう。しかし眠っている間は無防備になりがちで捕食者に襲われるリスクが高くなります。鳥たちの眠る場所は種類や季節によって様々ですが、鳥たちはそのリスクを減らすために安全な場所を選択しているようです。

 肉食哺乳類のいる場所では地面で眠るのは大変危険で、日中は地面で採餌しているキジやコジュケイも眠る時は木の上で眠ります。テンなどは木にも登れますので木の上で寝ていれば絶対に安全かというとそうとも限りませんが、地面よりは敵の接近に気づきやすいので比較的安全と言えるでしょう。

 また、地面で眠る鳥もいますが、危険を避けるために面白い習性を持つものもいます。その一つがコリンウズラ。外来種として日本にも入ってきている鳥ですが、眠る時は地面に数羽が集まりみんな頭を外側に向けて円になって眠ります。そうするとそれぞれの個体で四方を見ることができるので捕食者を発見しやすいですし、もしも捕食者に見つかった時には四方八方に逃げることで敵を惑わすことができます。また集まって眠ることで保温効果もあるようです。

 

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写真2.竹藪のねぐらに集まるムクドリとワカケホンセイインコ

ねぐらに人気の竹藪

 木の上と同様、またはそれ以上に人気があるねぐらが竹藪です。スズメやムクドリ、外来種のワカケホンセイインコなどは群れで、キジバトは少数で竹藪をねぐらにすることがよくあります(写真2)。竹であれば木よりもツルツルしているので登りにくいでしょうし、捕食者が登ってきたら揺れるので群れの誰かが気づき、危険を知らせることで逃げることができます。また、竹藪は枝が多く込み合っているので、フクロウ類やほかの猛禽類などが飛び込んでくる危険も少ないようです。

 スリランカを訪れた際にワカケホンセイインコのねぐらを案内してもらったのですが、その全てがヤシの木でした。ヤシの木の利点は竹藪と共通する点があります。ヤシの木も枝が無く哺乳類やヘビにとっては登りづらいでしょうし、外敵が樹冠にある葉っぱの方までくれば揺れるのでやはり気づきやすいのでしょう。面白いのがその眠り方で、みんな一様に葉っぱの下に入って両脚を広げて葉っぱを掴みながら寝ていました(写真3)。他にこんな眠り方をしている鳥を見たことがありませんが、日頃からぶら下がったりしながら採餌するワカケホンセイインコにとってはこの様な格好でも辛くないのかもしれません。ヤシの木の葉の下で眠るのは下からは丸見えですが、見えることで逆に下からの捕食者が登ってくることにはやく気づくことができますし、上からの捕食者である猛禽類からは隠れることができ急な襲撃を防げるので好都合なのでしょう。

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写真3.ヤシの木の葉にしがみついて眠るワカケホンセイインコ

ねぐらは外敵次第

 以前奄美大島で夜間の動物観察に出かけた際、道路わきの木から道路上に張り出した枝先に2羽で眠っているズアカアオバトに出会いました(写真1)。ズアカアオバトにとって最大の天敵はハブになりますが、ズアカアオバトは枝先で眠ることでたとえハブが近づいてきたとしても枝の揺れで気づき、飛んで逃げることができます。近年ではノネコが野鳥を襲い問題になっていますが、道路に張り出した枝先であればノネコも接近できないでしょう。ルリカケス、オオトラツグミ、アカショウビン、キジバトでは、枝先以外にも電線で眠っている個体もいました(写真4-6)。奄美大島では鳥を襲うような大型のフクロウがいないので、上からの攻撃を気にする必要がなく、電線や枝先といった周りからよく見える場所でも眠ることができるようです。

 逆に大型のフクロウがいるような場所では地面から登ってくる哺乳類の攻撃以外にも、上空からの襲撃にも注意が必要になります。フクロウからの攻撃を避ける為には樹洞でねぐらをとることが有効でしょう。フクロウが営巣した巣箱の中の巣材には羽根や骨などの食痕が残されているので、それらを分析するとどのような餌を繁殖期に食べていたのか垣間見ることができますが、実際に巣材を分析すると、樹洞で寝るキツツキ類やカラ類の羽根が出てくることは比較的少ないように感じます。しかし樹洞はヘビに襲われると逃げ場がないというデメリットもありますので、穴が2つ以上空いている樹洞を選ぶ個体もいるようです。

 

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写真4.電線で寝るルリカケス
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写真5.電線で寝るオオトラツグミ
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写真6.電線で寝るリュウキュウアカショウビン

身近なねぐら

 ムクドリ、スズメ、ハクセキレイは、しばしば駅前の街路樹などの人通りの多いところで群れでねぐらを作ります。明るく騒がしい場所では眠りづらいように思えますが、そういった場所を選ぶことで地上にいる大抵の捕食者を遠ざけることができます。しかし近年ではオオタカやハヤブサが都市に進出し人通りの多い場所にあるねぐらでも襲われるといった事例が出てきています。こういった都市に進出してきた猛禽類は人通りが多くてもさほど気にしないようで、目をつけたねぐらには毎日のように襲撃にきます。そのうちにねぐらが消滅したり移動したりすることもあるようで、自然界ではそのような攻防が日々繰り返されています。

 鳥たちが寝ているところはなかなか見つけるのが難しいこともありますが、案外気づいていないだけで先にも述べたように駅前など観察しやすい場所でも眠っていることがあります。もしも眠っているところを見つけることができた時はなぜその場所で眠っているのか考えてみてください。捕食者対策以外にもその場所をねぐらにする理由はあるでしょうし、群れで眠る場合と単独で眠る場合にもそれぞれ理由があるでしょう。眠っている場所を見ればその鳥を取り巻く環境やその鳥の生態を知るヒントになることでしょう。

 

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プロフィール

松永 聡美(まつなが さとみ)

公益財団法人日本鳥類保護連盟調査研究室主任研究員。小さい頃に自宅でセキセイインコを飼っていたことがきっかけで庭に来る野鳥にも興味が湧き野鳥好きに。連盟ではワカケホンセイインコの調査を担当。外来鳥類と人とが共存できるように調査を行っている。