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2021
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環境に適応した鳥の生活スタイル

ドバト上野公園2016.12.14(2).jpg
写真1.ドバト
 人間は元々昼間活動し、夜は寝るという活動スタイルだったと思いますが、明かりという文明を手に入れた人間は、もうどちらかに分類するのは不可能になってしまいました。鳥はどうでしょうか。

​夜行性と昼行性

 「夜行性(やこうせい)」という言葉を聞いたことがありますよね。昼間の明るい時間帯は寝ていて、日が暮れて暗くなってから行動する動物を夜行性動物と言います。長い進化の過程で夜という暗闇で生きることを選択した動物です。この反対は何か分かりますか?それは「昼行性(ちゅうこうせい)」です。日が暮れると眠りにつき、夜が明けて明るくなったら行動を開始することです。鳥の多くは昼行性で、フクロウの仲間やヨタカ、ゴイサギなど一部の鳥類が夜行性の生活スタイルをとっています。鳥類のほとんどはこのどちらかに分類されますが、曖昧な鳥もいます。その一つはカモ類です。カモ類も元々は昼行性なのだと思います。しかし、日本では昼間は狩猟が行われています。冬、越冬のために日本にやってきたカモ類は、昼間は水辺の茂みや銃の射程距離から離れた沖で休息し、日が暮れると餌を探しに活動を開始するのです。人間の文化に合わせて生活スタイルを変えた鳥と言えるでしょう。

リュウキュウコノハズク山原2016.6.12(2).jpg
写真2. 夜行性のリュウキュウコノハズク
オナガガモ長野県安曇野市2019.12.10(4).jpg
写真3. 池で休息するオナガガモ
シギ・チドリ
 夜行性、昼行性に当てはまらない鳥もいます。それは干潟で餌を食べるシギ・チドリ類です。シギ・チドリ類の中でも干潟に依存するものは、干潟が出るのを待って採餌を始めるので、昼夜関係なく、干潟が出ている時間は起きて活動し、満潮時には休息しています。1日に2回、潮の満ち干きがありますから、シギ・チドリはそれに合わせて活動したり休息したりしているのです。東京湾にある三番瀬は干潟が出る場所として有名ですが、内陸側にも谷津干潟と呼ばれる孤立した干潟があります。元々は谷津干潟の場所が東京湾の沿岸にあたっていたのですが、埋め立てにより沿岸は現在の位置になりました。谷津干潟はかつての東京湾を残したサンクチュアリです。谷津干潟は大きな干潟が出る船橋海浜公園から約3km離れています。東京湾とは水路でつながっていますが、内陸にある分干満の時間が1時間半ぐらいズレます。シギ・チドリはそのこともよく知っていて、三番瀬が満ちると谷津干潟に移動し、谷津干潟が満ちると三番瀬に戻って干潟が出るのを待つという行動を繰り返すものもいます。市街地の上を飛ぶシギ・チドリの群れを見ていると、約3kmの移動も大変ですが、休む時間も少なくなりそうで大変そうだなと思います。しかしシギ・チドリの多くは移動途中の渡り鳥ですから、食べてエネルギーを蓄えることが最優先なのでしょう。
ハマシギ船橋海浜公園2015.3.4(1).jpg
写真4. 干潟で採餌するハマシギ
メダイチドリ谷津干潟2018.4.13(12).jpg
写真5. 干潟で採餌するメダイチドリ
人間の生活への適応
 夜行性、昼行性、そして干潟の干満に合わせた生活スタイルの3つを紹介しましたが、鳥類の中にはこの3つのパターンにも当てはまらない鳥がいます。それがドバトです。ドバトは元々昼行性の鳥ですが、いつからか人間の生活に合わせた生活をするドバトが出てきました。その舞台は駅です。駅の営業が終わって暗くなるのは終電が発車する真夜中の0時前後。日付が変わる頃です。それまでは駅は明かりが灯り、人もたくさん行き交っています。そんな夜の駅を歩いていると駅構内を歩いているドバトに会ったことはありませんか?夜の駅周辺は通行人が落とした食べ物を獲得できる絶好のチャンスのようで、駅前の街路樹でスズメやムクドリ、ハクセキレイなどが就寝している傍らで、終電で駅が暗くなるまで起きて活動しているドバトがいるのです。まさに人の生活に合わせて適応してきた鳥ですね。
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写真6. 新宿駅構内で餌を探すドバト 
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写真7. 新宿駅構内で餌を探すドバト
ドバトの試練
 そんな人からもらえる食べ物、人が落とす食べ物に依存していたドバトは、あるときから別の適応を強いられました。それは「ハトにエサを与えないで!」という運動です。ドバトの英名はRock Doveで、Rock(岩、岩壁)と言われるぐらいですから、崖地などに巣を作って生活していたのだと思います。ドバトは外来種ですが、日本では元々堂鳩(どうばと)と呼ばれ、日本に定着後は御寺などの御堂に集まっている鳥でした。その後建築様式が発展し、マンションやビルなどが彼らの良い生活空間になり、ベランダなどの人の生活空間で休息したり巣を作ったりするようになりました。その結果、糞などが原因となる衛生問題に発展してしまったのです。そのため、全国的にハトにエサを与えないでほしいという運動が広がり、各地でドバトの姿が激減。広島県広島市の平和公園では、平和の象徴に例えられ公園内を飛び交っていたドバトの大きな群れも見ることができなくなりました。ドバトたちはどうなったのでしょうか。急に冷たくなった人間たちに見切りをつけ、新天地を求めて移動したドバトもいたはずですが、長い目で見ると餌の減少で繁殖率が低下し、徐々に個体数が少なくなっていった場所が多いのではないかと思います。しかし、それでもドバトはたくましく生きています。これまでドバトがたくさん見られた公園を歩いてみると、他の野鳥のように林床で餌を探し、木の実を食べて生活していました。人間が餌を与えないことで、ドバトも生き抜くための適応をしているのです。コロナ禍で私たちも生活を大きく変えることを余儀なくされました。ドバトに負けず頑張りたいものです。
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写真8. ムクノキの実を食べるドバト 
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写真9. 水を飲むドバト
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プロフィール

藤井 幹(ふじい たかし)
公益財団法人日本鳥類保護連盟調査研究室長。学生時代から羽根に魅せられ、羽根から種を識別することをテーマに羽根収集に明け暮れる。著書に「羽根識別マニュアル」(文一総合出版)、「世界の美しき鳥の羽根 鳥たちが成し遂げて来た進化が見える」(誠文堂新光社)、動物遺物学の世界にようこそ!~獣毛・羽根・鳥骨編~(里の生き物研究会)、野鳥が集まる庭をつくろう-お家でバードウオッチング-(誠文堂新光社)など

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