2021
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羽根を再利用する動物たち

写真1.羽根を運ぶエナガ1(内田信也氏撮影)
「羽根は自然界の中でも貴重な資源だから、むやみやたらに拾わないほうがいいです。たくさん落ちていたら少しだけもらっていきましょう。」というのは、観察会でも耳にする話で、私も自分のことは棚に上げて色々なところでそういう話をしてきました。しかし、実際誰がどれくらいの量を使っているのかと聞かれると答えることができません。落ちている羽根全てが再利用されるというわけではないと思います。分からないものは調べよう!ということで、以前実験したことがあります。羽根をたくさん置いて、そこにカメラを設置し何が来るかを観察したのです。しかし、羽根を持っていったのはエナガとハシブトガラスだけで、ネズミらしきものも写っていましたが、羽根目的で来たかは分かりませんでした。 
 
鳥類では、エナガが巣材として膨大な羽根を使用することが知られていて(写真1~5)、一つの巣で1,000枚以上の羽根が使われることもざらにあり、海外ではエナガの巣から2,000枚を超す羽根が出てきた事例もあります。
写真2.羽根を運ぶエナガ2(秋山幸也氏撮影)
写真4.使用後に落ちたエナガの巣
写真3.羽根を運ぶエナガ3(内田信也氏撮影)
写真5.羽根がふんだんに使われているエナガの巣の内側
カラス類やカワラヒワ、メジロも産座や巣材に使いますし(写真6,7)、ツバメが造巣後に巣に持ち込むことも知られています。スズメやムクドリも羽軸の太い羽根は巣材として持ち込みます(写真8)。
写真6.羽根を運ぶカワラヒワ
写真7.羽根を運ぶメジロ
写真8.羽根を運ぶムクドリ(内田信也氏撮影)
ヒメアマツバメも巣材に羽根を大量に練りこみ、入り口は羽根だらけになるので結構羽根を使いますね(写真9)。以前ヒメアマツバメの巣には何の羽根がどれくらい使われているかと思って調べたことがありますが、完全に巣材として練りこまれていて摘出できないものが多く断念しました。しかし、彼らは上空に浮遊している羽根しか取れないので、人間とは拾う場所が異なります。一種の住み分けということでご容赦いただきましょう。あとは巣材ではありませんがカイツブリの仲間はヒナに羽根を与えることが知られています。これは消化を助けるためだと言われていますが、いずれにしてもそれほどたいした量ではありません。また、ツバメが巣立ち雛に羽根を与えている写真を見せてもらったことがありますが、これはどういう意味だったのかいまだに謎です(写真10)。単に親が間違えたということなら雛はかわいそうですね(苦笑)
写真9.羽根を使ったヒメアマツバメの巣
写真10.巣立ち雛い羽根を与えるツバメ(内田信也氏撮影)

哺乳類はどうかと考え、ネズミが穴に持ち込まないか哺乳類に詳しい知人に聞いてみましたが分からないとのことでした。しかし、以前、食痕となったドバトの羽根が何者かにかじられてボロボロになっており、一部が近くの穴に突き刺さっていたのを見たことがあります(写真11)。ネズミは落ちたシカの角をかじりますから、羽根もかじるかもしれませんね。また、ハムスターは綿とか好きで巣穴に持って入りますから、ネズミも保温のために羽根を持ち込むのではないかと想像しています。これはそのうち実験で確かめたいと思います。
 

写真11.ネズミの穴に持ち込まれたと思われる羽根
そういえば、アリが巣穴に羽根を持ちこもうとして、入りきらずに穴に突き刺さっている様子を何度か見たことがあります。アリが食べるなら結構な量が消費されるはず?と考えて、アリの巣の近くに羽根を置いて調べてみましたが、全く反応しませんでした。これまでアリの巣で見てきた羽根は、どうやら成長途中で羽鞘や血が残っている羽根だったようです。そのため、羽鞘や血のついてない羽根をアリの巣の周りに置いても興味を示さなかったのでしょう。つまり、アリのお目当ては血の付いた羽鞘ということのようです。でもオーストラリアではモモイロインコの体羽にアリが寄ってきていたのを見たことがあります(写真12)。これはモモイロインコが羽根に塗った尾脂腺からの油に関係があるのかもしれません。
写真12.モモイロインコの羽根に群がるアリ
そういえば、クモの巣に落ちてきた羽根をジョロウグモが一生懸命食べようとしていました(写真13)。これはただの勘違いですね。昆虫では、他にコブスジコガネというちょっと変わった虫がいます(写真14)。これは羽根に集まるらしく、野外で羽根をたくさん置いていると捕獲できるそうです。それを聞いて私も何度か試しましたが捕まらず。しかし、フクロウ巣箱の巣材をチェックしていたら、コブスジコガネの仲間のコブナシコブスジコガネが大量に出てきたことがあります。しばらく羽根だけで飼っていましたが、肉もやはり食べるようで、翼ごと入れていたら骨や羽軸以外はほとんど食べられていました。腐葉土と一緒に入れていると勝手に世代交代していましたが、なかなか姿を見せないので、生きている成虫と対面することは滅多にありませんでした(苦笑)。 
写真13.羽根を餌と間違えて食べようとするジョロウグモ
写真14.コブナシコブスジコガネ

あとは菌類に分解されて土に帰り自然界に循環されていくぐらいしか思いつきません。動物は自然界に落ちた羽根を利用する。そこは間違いありませんが、野生の動物はエナガやヒメアマツバメ以外、それほどたくさんの羽根を必要としていないのかもしれません。それなら、拾わないほうがいいというほど自然界で神経質になる必要はないかもしれないと今では考えています。

 

羽根は私たちにたくさんの情報を与えてくれます。羽根がきっかけで自然が好きになった人もいるでしょう。羽根は自然からの贈り物。エナガと人間で羽根拾いを競い合う。それぐらいユーモアがある考え方でいいのかもしれません。

プロフィール
公益財団法人日本鳥類保護連盟調査研究室長。学生時代から羽根に魅せられ、羽根から種を識別することをテーマに羽根収集に明け暮れる。著書に「羽根識別マニュアル」(文一総合出版)、「世界の美しき鳥の羽根 鳥たちが成し遂げて来た進化が見える」(誠文堂新光社)、動物遺物学の世界にようこそ!~獣毛・羽根・鳥骨編~(里の生き物研究会)、野鳥が集まる庭をつくろう-お家でバードウオッチング-(誠文堂新光社)など

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