【活動内容】
私たちは琵琶湖のヨシを利活用し、放置されている放置ヨシ群落を復活させる取り組みをしています。昭和30年代に約260haあったヨシ群落は、干拓、埋立て等により、平成4年には約173haにまで減少しました。様々な取り組みの結果、令和7年度には同じ程度の群落面積まで回復したとされていますが、ヤナギの木が生い茂り、ヨシなどの抽水植物面積は100haを割り込んでいます。ヨシは元来、1年間の中で、刈り取りやヨシ焼きによって管理され正常な循環を維持していました。刈り取られたヨシは葦簀や茅葺など製品化され、そこで生まれた経済により刈り子を雇う金銭が生じ、人の営みと自然とが共存するシステムがそこにはありました。しかしながら、近年は石油製品の普及や科学技術の発展に伴い、ヨシ製品の需要が減少したことで、人の手が入りにくくなりました。現在、ヨシの刈り取りや製品販売をしている業者は数えるほどしかありません。
そこで、探究学習としてのマテリアルとして新たにヨシの需要を生み出し、正常なヨシ循環を取り戻すことで豊かな琵琶湖の持続可能性に貢献できるのではないかと考えました。我々はヨシ製品の新たな開発を行うとともに、小学校や地域のイベントでのワークショップ開催で琵琶湖の現状や資源について改めて考えてもらう場を設けました。具体的には下記3つの柱を基に活動しています。
①ヨシ植え、ヨシ刈りを学習コンテンツ化
②ヨシを活用した新しい製品の開発
③環境教育プログラムとしての利用
2025年度には「琵琶湖システム」の世界農業遺産に認定されたことをきっかけに、ヨシだけでなく包括的な琵琶湖を取り巻く環境を同時に学ぶ重要性に気づきました。そこで、今のヨシの探究活動に加え、漁業・森林・工業・伝統文化の4つの分野のスペシャリストと手を組み、放課後の学校を解放した「夜の学校」という講義と、「体験型アクティビティ」の2本立て講座を計4分野学ぶ「滋賀のわプロジェクト」を推し進めている。
REPORT
🎥活動PR動画
✨活動PR資料
【活動による成果・効果または活動によって今後期待できること】
ヨシ原は、人の手が加わることで初めて健全な循環が保たれます。ヨシ刈りやヨシ焼きは伝統的な行事であると同時に、翌年の芽吹きに対して非常に高い効果をもたらします。しかし近年では、ヨシの生活利用が減少し、手入れが行き届かない放置群落が多く見られるようになっています。こうした群落ではヤナギが侵入・成長し、その結果、ヨシの群生面積が縮小してしまいます。 琵琶湖にとってヨシ原は、魚や鳥など多くの生き物にとって「すみか」や「産卵場所」となっており、ラムサール条約にも認定されるなど、生態系保全において重要な役割を果たしています。また、ヨシには水中の窒素やリンなどの汚濁物質を吸収・分解する能力があり、保全活動を通じて水質改善にも寄与し、琵琶湖の透明度の向上にもつながります。
私たちの活動は、こうしたヨシの自然循環を再び活性化させることで、豊かな琵琶湖の環境を未来へ継承し、「住み続けられるまちづくり」を目指すものです。 さらに、地元の自然や文化に直接関わることで、高校生自身が地域への愛着や責任感を持つようになります。実際に実施したアンケート調査では、プロジェクトに参加した生徒は、一般の高校生と比べて環境教育を他者へ広めたいという意識が高まっていることが確認できました。特に滋賀県湖北エリアでは人口流出が深刻であり、若者が地域に愛着を持つことは非常に重要です。この活動は、そうした地域課題に対する一つの有効なアプローチとなっていると実感しています。
また、活動を通して地元住民や行政、企業、大学などと連携する機会が多く、地域とのつながりを強く感じることができた点も、非常に高い教育的効果がありました。本校は地域に根ざしたコミュニティ・スクールとして、多様な連携が求められる中、この活動を通じて得られた関係性は、学校が地域においてどのような存在であるべきかを学ぶ貴重な機会となりました。
この活動は、日本最大の湖である琵琶湖の自然を次世代へと引き継ぐための重要な第一歩であり、同時に高校生による取り組みが他地域や他世代への良きモデルとなることで、全国的な環境意識の向上にもつながることを願っています。
【アピールポイント(活動において特に工夫したこと、注意・注目したことなど)】
実際に琵琶湖の現地を訪れてヨシを植え、地域で保全活動を行うNPO法人の方々から直接お話を伺うことで、教科書だけでは得られないリアルで実践的な知識を学び取りました。現場の声を大切にしながら探究を進めた点が、本活動の大きな強みです。滋賀県近江八幡市には、重要文化的景観に認定されたヨシ群落があり、そこでのヨシ刈りも実際に体験しました。1年間を通して、ヨシ群落の循環に包括的に取り組めたことは、活動の大きな成果の一つです。
また、地域のワークショップへの出展や小学校への出張授業を実施するなど、地域資源の新たな利活用の可能性を探る取り組みも行いました。「ものづくりTECH 2024」や「ながはまコミュニティカレッジ学園祭」などで活動の紹介を行い、その様子は各イベントのホームページにも掲載されています。このように、高校生自らがアイデアを出し、自分たちの手で活動を実行していく姿勢こそが、私たちの強みです。
活動を進めるにあたり、多くの連携がありました。実行委員会の立ち上げ時には、ヨシネットワークやNPO法人の方々からお話を伺い、現場の声を重視して活動方針を構築しました。その後は、環境系シンポジウムや専門家による講演にも積極的に参加し、琵琶湖博物館などの専門機関からも知見を得ました。こうした学びをもとに自ら活動を企画・実践し、啓発・啓蒙活動として地域や学校にも広げていきました。
活動の展開にあたっては、滋賀県立大学や長浜市と何度もミーティングを重ねるなど、多様なステークホルダーとの連携を深めました。このように、多くの人々とつながり、協働することは探究活動における重要な教育要素の一つであり、私たちが特に注目して取り組んできた点です。















